Story2『鏡の前で』

room-234641_640

「あ……」

昼下がりのシティホテル。

部屋に入り、2、3歩進んだところで、その人に背後から抱き絞められた。

厚い胸板。若い人が使うコロンの香りが漂う。

「やだ、シャワー浴びてから、」

そう言ったのに、ワキから差し込まれた両手が静かに前に回った。大きな手が私の両胸をゆっくりと柔らかく撫で始める。

「浴びなくていいよ」

低い声……。

男の唇がわたしの耳に触れ、舐めるように囁かれた。

「でも、汗かいたし」

「その方がそそられる」

耳に感じる息が熱い。声と一緒に舌が、耳の中を犯していく。

「ああ……」

初めて会う男の人と、こんなところでHなことをしている。そのあり得ないシチュエーションだけで濡れてしまう。

「見て、綺麗だよ」

囁きに顔をあげると、目の前に鏡があった。

ドアから、ベッドのある部屋まで向かう通路。

壁面収納となっているクローゼットの横に、全身を映しだす大きな姿見が設えてある。そこには後ろから男に抱き締められている自分の姿があった。

「見て」

男はもう一度言うと、私をその正面に立たせた。うなじに唇を這わせながら、男の手が私の服を、下着を、上手に脱がせていく。

窓から射す光が、レースのカーテンを通して、柔らかく部屋全体を包み込んでいた。

静かな昼下がり、シンプルだけど上品な造りの部屋。その中で繰り広げられる情事。

「綺麗だね」

鏡の中の私は、いとも簡単に全裸にされていた。

「やだ、あなたも脱いで」

後ろから私を抱える男は服を着たままなのに、自分だけが一糸纏わぬ裸体をさらしていて恥ずかしい。まるで玩具にされているようだ。

男はそれには答えずに足元に広がった私の衣類を拾い、ベッドのほうへと放り投げた。

「見せて」

そうしてまた後ろから羽交い絞めをするように私を抱くと、壁にもたれかかって足を私の足の間に差し込み、肩幅より広く開かせて固定した。

「キミがオナニーするところが…見たいんだ」

「えっ?」

「キミが、自分で弄っているところが見たい」

鏡越しに男と目が合った。じっと私を見つめている淫靡に光った黒い瞳。

「そんな……」

どうやらそういうフェチの人みたい。

「自分で弄って、よがり泣くところが見たい」

厭らしい言葉を耳に低く囁かれて、体がゾクッと震えた。

「オレも手を貸すから」

男は私の手を取ると、開かれた足の間へと持っていく。

「あ……いや」

すごく、濡れていた。

「こんなに……?」

男の声が興奮しているのがわかる。

「オナニー……して見せて」

「で、でも、恥ずかしい」

悪魔の囁きに、慌てて首を横に振った。

「知らないの? 恥ずかしいから、感じるんだよ」

だ、だけど人前でそんなこと、できるわけがない。

「ご主人には? 見せたことはないの?」

「そんなこと、」

求められたことがない。

「せっかく日常から抜け出してきたんだ。ご主人とは、しないことをしようよ。感じてる顔、厭らしい指の動き、オレだけに見せて欲しい」

後ろからまわされた男の手が、私の胸を揉み始めた。

「あ…ん」

思わず声が漏れてしまう。

もう押さえつけられてもいないのに、指を股間から離せなくなっている。

自分の…一番敏感な部分に、私の中指が触れていた。

指が愛液にまみれていく。

「ああっ」

突然、男が両方の乳首を同時にギュッとつまんだ。それからクリクリと指で捏ね回す。

「はぁぁ…」

「もっと、声出して」

男の指は、激しく、そして執拗に私の乳首を攻め続けた。

「あ…う、んん…」

夫とのSEXではあまり声をあげない。子供が起きたら困るって、いつも頭のどこかで気にしているから。

「あっ、はぁ……」

や、やだ、何? この人の触り方……。ジーンと痛いほど抓った後で、さわさわと、触れるか触れないかで快感を焦らされる。

「はぁ……ん」

「キミの啼く声、凄くイイ。もっと……自分を解放して見せてよ」

低い声が耳に囁かれた。

女性の性感帯を知り尽くしているのかもしれない。熱い息を吹き込まれ、乳首を弄ばれて、だんだんと息が荒くなる。

「ああ……ん、はぁ……はぁ……」

いつもとは違う自分の喘ぎ声に、いつのまにか股間で中指が動いていた。

そっと…花芯をなぞり始めると、男の指がまた胸の先端を強く抓った。

「は…っ、あぅ…っ」

「いい子だ。もっと悶えて」

耳の中に熱い舌が入ってくる。

「ん……あう、あ…う、はっ、はっ、」

「指、動いてるね。自分で弄ってるんだ?」

「あっ、ヤ……」

恥ずかしくなって止めようとするのに、止まらない。

男が焦らすように乳首を撫でるから、下腹部がじんじんと疼き出していた。

足りない刺激が欲しくて欲しくて、指を……動かしてしまう。

き、気持ちいい。あ、う……、気持ちい……。

「じゃあね、オレの言うとおりに言って。言葉で感じさせてあげるから」

言葉で……?

「オ・ナ・ニー」

低く湿った声が、耳の中に吹き込まれた。

「言ってごらん」

「え…」

「自分で厭らしい言葉を口にするだけで、どんどん淫らな気持ちになってくるから」

「そんな…」

「キミは淫らで、美しくて、世界中の男を虜にする……淫乱だ」

「ち、ちが…っ」

「違わないよ」

男の両方の手が、指先で乳首を摘まみ、クリクリと捏ねくり回した。

ああ……。頭の中で何かが崩れていく。

「オナニー。さぁ、言ってみて…」

もう一度、熱く纏わりつくような吐息を、耳の中に吹き込まれた。

「オ…ナ…」

催眠術にかかったように繰り返してしまう。普段は決して口にしない言葉…。

「もっと悶えて」

「……オ…ナ、ニ…」

繰り返すと、蜜がだらだらと溢れだした。男の言う通り、自分が自分でなくなっていく快感に突き動かされる。

「オ…ナニー…、ああ…オナニー…」

鏡の中には、男に体を委ねて、自分の股間で指を動かす女がAV女優のように映っていた。

mirror-234637_640

「指、挿れてみて? 自分で自分を犯してみろよ」

頭の芯が痺れて、いけないとわかっているのに、男の言葉に支配されていく。

ぬぷ……。

私は左手の人差し指を、自分で自分の中にうずめた。

「う…、は……ぁ」

「厭らしいね。指…凄い入ってくよ、キミの中に」

「いや、見ないで……」

そう言ったのに、男はグイッと足を広げ、私の足をさらに開かせた。

「ああんっ」

「本当は見られたくて堪らないくせに……」

鏡に映し出されるあまりに卑猥な自分の姿。

もう自力では立っていられなくなり、男に体重を預け大股を広げ、それでも自分に沈めた指を動かし続けていた。

「凄いね、キミ…。そんなにオナニーが好きなの?」

男が乳首をグリグリと扱く。

「あっ、あっ、」

鏡越しに食い入るように見つめる視線。

蔑む言葉。熱い吐息。

「は…ぁっ、恥ずかしいのに……指が…止まら…ない……」

「いいんだよ、止めなくて。イクまでずっと見ててやる

後ろから胸を揉む手のひら。うなじを這う舌。

身体中がじんじんと痺れている…。

「エロいな、涎がたれてるよ」

気がつくと弛緩した口からタラリと涎が流れていた。あまりの快感に…頭が変になっている。

下の口からも蜜が滴り、カーペットに糸を引いてこぼれ堕ちるのが見えた。

男は、びしょ濡れのその部分がもっと鏡に映るようにと、私の太腿に手をかけ、片足をグイッと持ち上げた。

「厭らし過ぎる……。キミの指も、キミのあそこも…、厭らし過ぎるんだ…」

男は息を荒くして、私のヒップに熱い固まりを擦りつけている。

「ああっ、挿れて…。あ、あなたの、欲し…い…」

「まだ、ダメだ」

「いや、お願い、ほ、欲しい…。あなたの、い、挿れて…」

気がつくと、涙を流しながら欲しがっていた。男の息が「はぁ、はぁ…」と、うなじを濡らす。

「その指がオレのだと思って、突きまくるんだ…」

「あっ、あっ、犯して…。あなたので、犯して…っ」

私は自分の指を、びしょびしょに濡れた秘壺の中に、めちゃくちゃに突き立てた。

「あうっ、あうっ、あうっ、あうっ」

ぐちゅぐちゅと、出し入れする指が卑猥な音を立てる。

「イ、イイッ、イイッ、イイッ、イイ…ッ」

「堪らない…。キミのよがる顔、堪らない…っ、はぁ、はぁ…っ

「ああ…ん、あああ…ん、ああ…っ、ああっ、」

頭の中が真っ白に痺れ、物凄い快感が全身を突き抜けた。

「あああっ、イク…ッ、イク――ッ」

ガクッとのけぞった私を、男がしっかりと受け止めてくれた。

「さぁ、これからだよ。もっといたぶってあげる」

男がベッドに私を運んだ。

 

《 THE END 》

スポンサーリンク
スポンサーリンク

フォローする